真昼の決闘
1977年の全英オープンは、ターンベリーで開催されました。
この大会ではトム・ワトソンがジャック・ニクラウスと真昼の決闘と呼ばれた死闘を繰り広げた。
最後まで息詰まる死闘を制したのはトム・ワトソンだった。
ターンベリーの真昼の決闘は、ゴルフ発祥の地イギリスで伝説として語り継がれている。
第138回TheOpen(全英オープン)
第138回TheOpen(全英オープン)は、老雄トム・ワトソンが主役の大会だった。
初日に5バーディノーボギーで好発進すると、
2日目は強風と雨というTheOpenらしい悪天候で周りの選手がスコアを落とす中パープレー。
トップタイで予選を通過しました。
3日目はスコアを一打落としながらも、単独首位に立ち3日目を終えました。
すでにこの時点で、ターンベリーのファンはトム・ワトソンの59歳でTheOpen優勝という最年長記録に期待していました。
全英オープン 最終日
通算4アンダーで最終日を迎えたトム・ワトソンでしたが、メジャー優勝を意識したのか。
ショットは好調でしたが、昨日までの強めのパットは見られず、距離をあわせたパットが目立っていた。
途中で再三ボギーを叩きスコアを落としますが、ボギーを叩けばバーディーを取り返すという内容で、16番までは通算2アンダーだったのです。
トム・ワトソンが16番でプレー中に、スチュワート・シンク(米)が18番でバーディをとり、2アンダーでトップタイに並びました。
トム・ワトソンは17番のロングホールで2オンに成功し、イーグルは逃したものの短いバーディパットを決め通算3アンダーに戻しました。
トム・ワトソンの一組前をまわっていたウェストウッド(英)は、その時2アンダーだったのですが、
ワトソンの3アンダーを確認していた為に、長いバーディーパットを強めのパットで勝負に出ました。
ウェストウッドのバーディーパットは、大きくカップをオーバーし、返しのパーパットも外してボギーにして1アンダーに後退。
誰もが、ワトソンの歴史的大記録を予感しました。
しかし、32年前に帝王ジャック・ニクラウスを下した時の、ターンベリーの女神は59歳のトム・ワトソンに試練を与える。
ティーショットはパーフェクトで、フェアウェー捉えました。
そして、セカンドショットも完璧なショットだったのです。
しかし、フォローの風に乗ったセカンドショットは、直接グリーンに落ちて止まりきらず、グリーンをオーバーしてしまいます。
ゴルフは完璧なショットが、必ずしも良い結果に結びつくというスポーツでは無いですが、59歳のトム・ワトソンには余りにも酷な結果でした。
それでも、ターンベリーの観客は、スタンディングオベーションでトム・ワトソンを18番グリーンに迎え入れます。
3打目のアプローチショットは、パターを選択しカップを狙うも寄り切らず、その後パーパットも外しボギー。
トップタイの通算2アンダーでスチュワート・シンクとのプレーオフに挑みました。
新しいチャンピオンと伝説の老雄
5・6・17・18番の4ホールで行われたプレーオフでしたが、5番ミドルホールでトム・ワトソンはイキナリ勝負に出ます。
ティーショットでドライバーを選択、見事なショットを放ち、フェアウェーの左右にあるバンカーの真ん中にボールを運びます。
安全策をとったスチュワート・シンクは、バンカーに届かないクラブでティーショットした為、30ヤード以上の距離が開きます。
スチュワート・シンクのセカンドショットは、落下地点から大きく右に転がって、グリーン右のバンカーへ
誰もがトム・ワトソンの最年長優勝を確信したと思います。
しかし、トム・ワトソンのセカンドショットは、大きくショートしてグリーン手前のバンカーへ。
スチュワート・シンクのボールは、何とかスタンス出来る状態だったため、見事なバンカーショットでピン側にナイスオン。
リンクスコース独特の垂直の壁を持つバンカーですから、スチュワート・シンクにとっては賭けだったと思います。
スチュワート・シンク本人も、「10回やったら半分はミスする」と思っていたんじゃないでしょうか。
トム・ワトソンのボールは、垂直の壁に接近していた為、ピン方向に打つことが出来ず、グリーンに乗せるだけのバンカーショットでした。
結局トム・ワトソンはボギー、スチュワート・シンクはパーセーブでした。
続く6番ショートホールでは、シンクがナイスショットでグリーンオン。ワトソンは大きく右に曲げ、ギャラリーよりももっと右へ。
老雄の雄姿
誰もがトム・ワトソンの優勝が絶望的と思ったのですが、老雄は諦めませんでした。そして谷底からナイスアプローチでパーセーブしたのです。
グリーン方向に大勢いたギャラリーの人混みが、真っ二つに割れて、人の花道を作りました。
まるで「モーゼの十戒」のワンシーンのようでした。
6番ではパーセーブ出来たのですが、9月には還暦を迎える老雄トム・ワトソンには、それ以上戦う余力は残っていませんでした。
4日間にわたりクレバーで堅実なゴルフを続けたトム・ワトソンでしたが、17番ロングホールでティーショットを左に大きく曲げて、深いラフに
一打でフェアウェーに戻す事が出来ずに、結局4オン。それでも果敢にパーパットを沈めに行きますが、カップをオーバーし、
返しのボギーパットも外してしまいます。
トム・ワトソン59歳のTheOpenが終わった瞬間でした。
最終18番では、ティーショットもセカンドショットもギャラリーの近くに打ち込み、まるでギャラリーに4日間のお礼をしているようでした。
伝説から新たな伝説へ
第138回TheOpenは、次々に有力選手がスコアを落として脱落していく、サバイバルのような大会でした。
稀代のサバイバル大会を、最後まで戦い抜いた老雄の雄姿に感動した人は多かったと思います。
ターンベリーのギャラリーは、トム・ワトソンに最後まで盛大な拍手を送り続けました。
スチュワート・シンクは、18番をバーディーで締めくくり、メジャー初制覇を果たしました。
32年前に伝説の死闘を制した老雄は、思い出の地で復活し新たな伝説をTheOpenの歴史に刻みました。
敗れたとはいえ、トム・ワトソンのファイティングスピリッツは、永遠にターンベリーとTheOpenの歴史に刻まれた。
TheOpen(全英オープン)のエントリ
TheOpen(全英オープン)3日目
TheOpen(全英オープン)2日目
TheOpen(全英オープン)1日目